
主に腎臓がん、膵臓がん、前立腺がん、子宮筋腫などを治療の対象にしている癌の“凍結治療”。日本ではまだまだ症例が少ないものの、身体に大きな負担がなく、入院も1日,2日で済んでしまう。何より高い完治率を誇るこの凍結治療。これだけ聞くとすごい夢の様な治療法が出来たのかと思うかもしれませんが、事実今癌治療の常識が変わり始めているのかもしれません。
癌の凍結治療とは?
簡単に言うと、「癌を凍らせて死滅させてしまう」というようなもので、正確には「凍結融解壊死法」と呼ばれています。癌細胞をマイナス185度という超低温で急激に冷却してしまう事で癌細胞を消滅させます。凍らせる行為はモノそのものを大きく変化させます。カチカチに凍らせた花を手で粉々にしてしまう映像をご覧頂いた事があるかと思いますが、まさにあれに近い現象で、急激に極端に冷やされる事で、癌細胞が脆くなり消滅させてしまうというものです。
米国では10年以上前から行われている治療法で、日本よりも多くの癌への治療へも適応されています。しかし近年機器が改良され、導入しやすくなったことで日本でも使われるようになりました。
具体的な治療方法は?
二重構造になった直径1mm程度の針を癌細胞に直接刺します。二重構造になっているため、癌細胞に刺した針の中に液体窒素化した高圧ガス流し込む事で、針先をマイナス185度まで急速に冷却すると、癌細胞が2センチ程度の氷の塊のようなものに包まれ凍結してしまいます。そして、次にヘリウムガスを流し20度程度まで温め解凍。この凍結と解凍を行う事で癌細胞が破壊され、血管も血液が通わなくなるため、癌細胞が完全に壊死するということです。

画像出典元:慶応義塾大学病院
90%以上が再発なし!脅威の完治率!?
国立癌研究センターでは、50代から90歳を超えた高齢者の腎臓癌患者に、2年間で50名ほど治療を行っています。そのうち癌が再発した方は数パーセントだけで、実に90%以上の方が完治しているという報告があります。しかし一方、この凍結治療が進むアメリカでは50%程度という報告もあり、完治率については今のところ正確なものとは言えませんが、間違いなく非常に精度の高い治療という事は間違いないのではないかといわれています。
とは言え、完璧な治療というわけではない
高い成功率を持ち、入院もほぼ1日で済んでしまう凍結療法。腎臓癌の治療には既に保険適応もされ、素晴らしい治療法である事は間違いないが、全てが完璧というものではない。
1.腫瘍の場所により適応困難な場合がある
腫瘍の近くに太い血管がある場合、血液の熱により十分に凍結が進まない場合があり、太い血管付近の場合、難しい治療になる事があります。
2.出血傾向のある患者には適応できない
腫瘍局部以外(腫瘍の周りなど)が凍結してしまった場合、それにより臓器が裂けてしまう場合があります。それにより出血多量になる可能性もあるため、適応できません。
3.国内症例も実施可能病院もまだまだ少ない
国立がん研究センターの荒井院長によると、「日本はこの治療法で、アメリカから10年は遅れている。海外では既に肝臓や肺、骨など様々な臓器にも使用されているので、私たちもこの凍結治療を拡大していきたいと努めているところです。」と今後の可能性に意気込んでいるようなので、今後に期待と言ったところでしょうか。
まとめ
保険適応されると、入院費や諸費用含めた自己負担金は約30万円という事です。局部に治療を施し身体への負担も非常に少なく、完治率も高い治療であれば安いものでしょう。今や癌は“治る病気になった”と言われていますが、日本人の死因率が最も高い現状も事実です。今後、こういった素晴らしい治療法がいくつも確立されることを願いたい。