
日本人の2人に1人が発症すると言われているがん。現在では抗がん剤をはじめとした科学的療法や放射線治療が確立していますが、画期的な治療方法はありません。特にがん治療はつらい副作用もたらすものも多く、その症状に悩まされているがん患者も少なくありません。近年、注目されているのが香りで不快な症状を緩和するアロマテラピーです。今回は心身を癒すアロマテラピーについて、ご紹介いたします。
アロマテラピーって何?
アロマテラピーとはエッセンシャルオイル(芳香性のある精油のこと)を使って、香りを楽しみ、心身共にリラックス効果を得ることができるリラクゼーションのことです。ストレスの多い日本社会において、女性を中心に人気があります。香りの生成の仕方は様々で、でランプのような弱めの火を使って、香りを飛ばす芳香浴、エッセンシャルオイルを湯舟に入れるアロマバス、マッサージオイルと併用して、身体に塗り込むアロママッサージなどがあります。エッセンシャルオイルの種類も豊富で、嗜好性の強い方は独自のブレンドでオリジナルエッセンシャルオイルを作成する方もいらっしゃいます。
アロマテラピーの効果は?
アロマテラピーの主な効果は芳香によるリラックス効果です。具体的には不安やうつ症状などの精神的な症状の改善が一般的です。また、がん患者のがん治療のサポートとしても用いられます。がん治療での不安や抑うつ症状の改善、がんによる痛みの軽減、抗がん剤などの化学療法や放射線治療によるつらい副作用の軽減にも効果があります。しかし、がん細胞に対しては明確な効果はなく、あくまで副作用の軽減と精神安定剤としてのサポート機能のみといえます。このサポート機能は、がん治療のサポートとしてのアロマテラピーは臨床試験によって、その効果が証明され始めています。がん治療による苦痛を和らげるには生活の質(QOL)を改善する必要があり、アロマテラピーはQOL改善に効果がある臨床結果が出ているのも事実です。しかし、アロマテラピーで使用するエッセンシャルオイルの中には乳がんや子宮頸がんに悪影響を及ぼす女性ホルモンのエストロゲン様作用を持っている特殊なものがあります。がん治療と併用して、アロマテラピーを行う場合は必ず担当医に相談して、取り組むようにしましょう。
アロマテラピーのメカニズムと避けるべき組成成分
前述したとおり、アロマテラピーはさまざまな楽しみ方があります。代表的な楽しみ方は芳香、入浴、皮膚への直接付与(塗り込み)です。芳香によるアロマテラピーは鼻腔内から神経系に直接作用するため、高い効果が期待できます。また、皮膚や粘膜から直接吸収することで成分が血流にのり、神経系や内分泌系にスムーズに流れ、全身へ巡らせることができます。そのほか、気道からの吸収も効果的です。しかし、人によってはエッセンシャルオイルが皮膚や粘膜に合わない場合があります。その際はすぐに使用を中止しましょう。特に一部のがんに悪影響を与える発がん性を持つエッセンシャルオイルも存在するため、エッセンシャルオイル選びは慎重になるべきです。ベンゾαピレン、サフロール、エストラゴール、ベータアサロン、メチルオイゲノールを組成成分としているエッセンシャルオイルは使用して安全な濃度が定められており、高濃度のまま使用すると発がん性の可能性が高まるリスクがあります。ベンゾαピレンに至っては0.00%と指定されています(引用:フレグランスジャーナル社 1996年 精油の安全性ガイド)。上記で紹介した安全な濃度指数は0.10~0.50%と厳しい基準になっています。また、必ずアロマテラピーに関する専門的な知識・技術を有している方に相談し、適量を処方してもらい、担当医に使用しても問題ないかを確認してから行うようにしましょう。