
世間でがん予防やがん対策に良いとされている食材やサプリメント、健康食品などは数多くあります。今回は、その中でも日本人に最もなじみのあり、最も多く食べると言われている魚、「鮭」に着目し、そのがん予防効果について詳しくご紹介します。
鮭の健康効果の秘密は「赤身」にあり
鮭にはがん予防効果があると言われていますが、それはどうしてなのでしょうか。また、がん予防以外にはどんな健康効果があるのでしょうか。
例えば、鰹は生の状態では赤身ですが、火を通すと白身になります。しかし、鮭の身は、火を通しても赤いままです。これは鮭の筋肉に含まれるアスタキサンチンという色素のためなのです。鮭以外の魚も、アスタキサンチンはプランクトンを介して摂取されますが、すぐに体外に排出されます。しかし、鮭だけは、川を上って産卵する性質があるため、魚の中でも特に筋肉が発達しており、アスタキサンチンが鮭の筋肉に取り込まれているため、赤い身をしているのです。アスタキサンチンは、ビタミンCやビタミンE、βカロテンなどと同じく、活性酸素を除去する性質を持つ抗酸化物質です。鮭ががん対策に良いのは、このアスタキサンチンが深く関わっているからなのです。
鮭の健康効果の秘密!アスタキサンチンとは
活性酸素は老化の原因として広く知られるようになりましたが、がんの原因にもなると考えられています。この活性酸素を除去する働きがあるのが抗酸化作用をもつ抗酸化物質です。
アスタキサンチンは抗酸化物質の中でも特に抗酸化作用が強力で、ビタミンEの約550倍、ベータカロテンの約40倍、コエンザイムQ10の約800倍という報告もされています。そのため、がん予防効果にも期待され、研究も数多く進められています。また、アスタキサンチンには、眼精疲労の改善や、白内障の進行抑制、視力の改善効果などがみられたとの報告もありますので、今後ますますアスタキサンチンの研究に期待されるでしょう。
アスタキサンチンは、鮭の他にも、エビ、カニ、イクラなどに含まれていますが、エビやカニなどの甲殻類は殻など捨てる部分が多いため、身の部分で比較すると、甲殻類のアスタキサンチンの含有量がどうしても少なくなってしまいます。イクラも一度にたくさん食べる食材ではありません。ですから、アスタキサンチンを意識して食材選びをするなら、最も食べやすく捨てる部分の少ない、そして最も効率よくアスタキサンチンを摂取できる鮭がおすすめです。
アスタキサンチンの目安摂取量は?
アスタキサンチンの目安摂取量は、サプリメントの表示などを見てみると1日4〜6mgが標準となっています。これは、鮭の可食部に換算するとおよそ2切れとなります。ちなみに、イクラなら小さじ30杯分、車エビなら30尾、たらこ6腹に相当します。
最も食べやすい食材である鮭でも、毎日2切れずつ食べるとなると、飽きてきますし、なかなか現実的ではありません。特に塩鮭の場合は塩分の摂りすぎで、高血圧や動脈硬化など新たに他の病気を惹起する可能性もあるので、調理法や摂取頻度には十分注意し、サプリメントと併用するなどの方法も考えておきましょう。
まだある鮭の健康効果の秘密!オメガ3系不飽和脂肪酸
ここまで、鮭の身に含まれるアスタキサンチンについてご紹介してきましたが、鮭の健康効果はアスタキサンチンだけにとどまりません。
サバやイワシなどの青魚に豊富に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)といった成分の名前を聞かれたことのある人は多いでしょう。これらの成分はオメガ3系不飽和脂肪酸と呼ばれ、がんの発症リスクを低下させる働きがあることが明らかになっています。
実は、鮭にもこのオメガ3系不飽和脂肪酸が豊富に含まれているので、アスタキサンチンの抗酸化作用とのダブル効果が期待できるというわけなのです。
偏りすぎるのはNG!適度に摂取しよう
鮭には、強力な抗酸化作用を持つアスタキサンチンやがん発症リスクを抑えるオメガ3脂肪酸が豊富に含まれています。しかし、がんに良いとされている多くの健康食品やサプリメントと同様に、鮭を摂取することでがんが良くなる、治るなどと飛躍して捉えないようにしましょう。アスタキサンチンの健康効果はデータがあるものの、まだまだ臨床的には不十分で、現状はサプリメントや化粧品などに配合されているのが現状だからです。
アスタキサンチンに健康効果がありそうだからといって、鮭だけを摂取していると栄養バランスが偏ってしまいますので要注意です。また、魚の摂取が過剰になると魚の重金属汚染などの問題も心配になってきます。従って、鮭やアスタキサンチンなどのがんに良いとされる食材や成分だけにこだわらず、色々な食材をバランス良く食べるということが最も大切なことです。
例えば、肉に偏った食生活を送っているなら魚を積極的に取り入れ、肉と魚、大豆などタンパク源をバランス良く献立に取り入れるようにするとか、白身魚ばかりに偏っているのであれば、鮭など赤みの魚を意識して週に何度かは献立に取り入れてみるというように、バリエーション豊かで栄養バランスの整った献立を意識して食生活を送るよう心がけるようにしましょう。
参考サイト
Fatty acids found in fish linked to lower risk of breast cancer(英語)
http://www.bmj.com/press-releases/2013/06/27/fatty-acids-found-fish-linked-lower-risk-breast-cancer